新疆 強制収容所から流出した内部文書 日本語訳

新疆 強制収容所から流出した内部文書 日本語訳

トップページ
詩が語るペルハット・トルスンの半生
ペルハット・トルスンとはどういう人か
不条理の哲学とペルハット・トルスン
ペルハット・トルスンの詩の世界
強制収容所の中にいる人たち

 

達坂城区にある収容施設。<https://www.businessinsider.jp/post-215663>より


 中国では現在も約100万人のウイグル族やカザフ族、その他の少数民族の人々が「再教育施設」と言われる強制収容所に入れられている。  
 中国政府はこの施設を、住民らが自発的に職業訓練を受けたり、テロ対策として過激思想を解いたりするための職業訓練センターだと主張しているが、2019年に403ページにわたる内部機密文書がこの施設から流出し、そこがまぎれもなく強制収容所であることが明らかになった。文書は専門家により本物であることが認められ、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公表した。

 流出文書には、2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局のトップにいた朱海侖が、収容所の責任者らに宛てた連絡文書と、各収容所からの日報も含まれている。
 この文書を読むと、収容所の中にいる人々がどれほど厳しく管理されているかがわかり、中国共産党への忠誠を誓うための洗脳教育が行われていることが示されている。収容されている人たちは各分野、各職業の老若男女すべてに及んでいて、収容所の過酷な環境に耐えられずに亡くなった人たちがいることも知られている。
 また、ある文書では、2017年のわずか1週間の間に、新疆南部から1万5000人が強制収容所に入れられたことがわかっている。

         <https://www.businessinsider.jp/post-176894>より

 上の写真は、カナダで衛星画像の分析研究プロジェクトに取り組んでいる張肖恩(ちょうしょうおん)氏が発表した強制収容所の写真で、カシュガル市に近い疏勒(そろく )県南部にある強制収容所を撮影したものである。  
 左が2017年2月、右が2018年8月のもので、張氏は、2017年に約2万8000平方メートルだった施設は、2018年8月までに、11倍以上の約32万平方メートルになったと述べている。  
 また張氏の映像解析で、新疆には21の強制収容所があることがわかっている。
 現在、綿花、トマトの生産、太陽光発電パネル用のシリコン製造に関して、強制労働によって生産されていることが問題となっている。インターネット上で「新疆の綿花畑では本当に「強制労働」が行われているのか?」というタイトルが目について読んでみたら、結局、中国側が用意した数字とビデオを見て、強制労働ではないと結論づけているものだった。日本で強制労働について調査する限界が感じられる。
 日本語訳に用いたのは、2019年11月24日に国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公表した、流出内部文書の中国語原文20ページとその英訳版である。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

新疆ウイグル自治区電信送信元 自治区党委員会政法委        署名捺印者 朱海侖

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
職業技能教育訓練センター工作の強化と規範化に関する意見  

〔宛先〕イリ・カザフ自治州党政法委及び各地、州、市党委政法委員会:


 「 組合拳 (組み合わせ拳法)」と「 三仗一戦(三種の武器で戦う)」 をもってテロとの戦闘を続けるためには、要注意人物に対して無料の職業技能教育訓練をすることが、長期的に見て戦略的で重要な手段である。
 自治区党委員会の関係部署による意志決定の取り決めを徹底的に実施し、職業技能訓練センター(以下、訓練センターと称する)の任務をさらに強化し、標準化し、訓練場所の安全を確保して教育と訓練の質を向上させ、 主要人物を最大限に教育し 、 救出し、保護し、そして新疆全土の長期的な安定を促進するために、関連する法規に従い、 前期に出した教育・訓練指導ガイダンス第12条に基づき、以下のような意見を再提出する。

1 訓練場所の絶対的な安全確保
 (1)人的、物理的、技術的な防衛法の組み合わせによって、脱走、トラブル、地震、火災、および伝染病予防の措置を厳格に実施する。警官が銃を持って研修者ゾーンに立ち入ることを厳しく禁じる。  
 脱走、騒乱、職員への襲撃、異常死、食品事故、重大疫病の発生を決して許してはならず、訓練センターの絶対的な安全を確保する。  

 (2)脱走防止。区域内分離と部門管理を堅持し、フロントゲート前の警察署、病院内警備員詰所、監視塔、警備所、巡回ルート等の設置を完全にし、外部との隔離、内部での分離、防護と防衛、および安全通路等の設備を完全にする。  
 セキュリティ機器、セキュリティ装置、ビデオ監視、ワンタッチアラーム等の適切な機能を確保する。 出入りする人間、車両、物品の厳格なセキュリティ・チェックシステムを設け、車両の進入を厳しく制御する。病院に駐車する必要のある車両の場合、車両の前面を内側に向けて駐車し、施錠されていなければならない。  
 施錠は厳格に行うこと。宿舎のドア、廊下のドア、および建物のドアは二重ロックにして二人で行い、すばやく開閉しなければならない。  授業、食事、トイレ、入浴、診察、家族との面接時に発生する 脱走を防ぐために 、 研修生の行動は厳しく管理する。研修生が休暇を願い出たときには厳密に調査し、病気などの特別な状況で訓練センターを離れる必要が出たときには、必ず同伴者が付いて監視しなければならない。 

 (3)騒乱防止。注意を必要とする人物、部所、時間帯、物品のチェックシステムを作って運用し、教室、宿舎などでの違反行為や異常な状況をすみやかに発見し、研修生の思想や、尋常ではない心理を常に推定し、これを取り除く。
 研修生が共謀して騒動を起こすことを防ぐため、情報提供の任務を持つチームを組織して秘密裏に配置する。  
 研修生は屋外での労働に参加できず、 定められた活動以外で外部に連絡することはできない。
 研修生が携帯電話を持つこと、あるいは職員が携帯電話を貸すことは厳禁で、職員が研修生と個人的に接触して共謀することを厳重に防止する。
  宿舎や教室の監視ビデオは担当警備員がリアルタイムで監視して詳細を記録し、疑わしい状況を即座に報告できるように、全体を映して死角のできないように設置しなければならない 。

 (4)地震災害予防 。新築される建物は耐震基準を厳密に守って設計・建設されなければならない。 既存の建物の改修・拡張時には耐震性を十分に考慮しなければならい。  
 訓練センターの建物の耐震性と安全性を定期的にチェックし、補強が必要な場合はすぐに補強しなければならない。  
 地震時の危険回避能力を高めるために、職員と研修生に対して地震災害の予防と回避に関する教育を強化する。

 (5) 防火。訓練センターではあらゆる火災の危険を発生源から除去するために、可燃物の持ち込みと直火の使用を厳しく禁じる。電気、ガス、石炭の使用に際する安全管理を強化し、厨房にガス警報器と緊急遮断装置を設置する。  
 定期的に避難通路、非常口、安全標識、防火設備、電気配線の点検を行い、防火に関する教育を強化する。

 (6)伝染病予防 。インフルエンザ、腸チフス、疥癬、結核等の伝染病予防、健康チェックシステムの整備、診療所設置、医療スタッフ・薬品・医療機器の確保、重大疾病患者の転院治療システムの構築に重点を置く。
 研修生一人一人の衛生状態を把握し、薬物使用者やエイズ等の伝染病患者は隔離して居住させ、一般の研修者とは別の教室での研修を行う。
 伝染病予防のための定期的消毒システムを整備する。
 食品調達、加工、保管、輸送の安全監視の基準を作り、見本用食品の保存システムを構築し実行する。1,000人以上の研修者を擁する訓練センターでは、食品の安全検査と衛生管理および防疫作業を行うため、専任者を常駐させる。

 (7)当直・待機勤務強化。24時間の監視任務・待機勤務制度を厳格に運用し 、 日常のリスク調査・判定メカニズムを構築し、隠された危険の定期的な調査を実施し、セキュリティの抜け穴を即時に遮断する。
 共同防衛パトロールシステムを厳格に実行し、周辺警察署等との協調連動メカニズムを整備する。「五防 (脱走防止、騒乱防止、地震災害予防、防火、伝染病予防) 」要求に従って、緊急時応計画を個別に策定し、実戦訓練を強化し、重大事件が発生した場合には、すぐさまその場で迅速かつ断固たる処置をとる 。


 情報提供の任務を持つチームを組織して秘密裏に配置する。」は、スパイ活動をするウイグル人を収容者の中に潜ませることだろう。
 日本に住んでいるウイグル人も、つきあっている友人がスパイである可能性を捨てきれず、公の反中国の行動には参加しない例が多い。
 また、新疆に住んでいる家族が人質になっているようなもので、在日のウイグル人自身が大きな声をあげて活動をしていくのは非常に難しい状況がある。

 教育訓練の質の向上
 (8)「三学」 の堅持。毎日、国語 (中国語) 、法律、技術を集中して学習する。国語の学習を主な履修課程として、時間、内容、質を確保する。法律と技術の授業では国語を使用し、 日常生活では徐々に国語でコミュニケーションをとるようにし、「脱極化 (脱過激思想化) 」の内容等を国語学習の中に取り入れる 。  
 研修生の国語水準と教養水準に応じたクラス編成を行い、クラス別教育を実施する必要がある。「班班通」ビデオの教育モデルを促進する。教育研究を強化し、教育計画を策定し、討論、意見発表、作文のための主題を組み立て、積極的向上心を持たせるための奨励・誘導の仕組みを作り上げる。

 (9) 教育の保障。各地州市は、国語教育用教材を編集し、実際の教育に従って常に修正し完成させる責任を負う。レベル分けされ分類された教科書と補助資料は、統一教科書として地州市の教育管轄部門によって検討およびチェックする。  
 中国人教師の採用を増やし、優れた国語能力を持つ研修生の中から優秀な者を教師として選任し給与を支給する。研修生が毎日教室で学習できるように、教室不足の問題を解消し、新しい教室の建設と拡張工事を加速するように努めなければならない。

 (10) 試験の強化 。ペーパー試験と口頭試験の組み合わせを続け、週に1回の小試験、月に1回の中間試験、季ごとに1回の大試験の試験システムを確立し、学習の進捗状況をその場でチェックする。地州市教育局は試験問題の採点とレベル分けを担当する。  
 テストの点数、特に国語(中国語 )の成績は研修生のファイルに記録され、教育と訓練の効果の評価と、研修生がコースを修了したかどうかを判断するための主要基盤を作るために用いられる。

 (11) 思想教育。 個別に会話するシステムを確立し、研修者の思想動向をすぐに把握し、思想の矛盾を取り除き、良からぬ意欲を持つことから遠ざける。  
 積極的に広報などの活動をし、健康的でやる気を起こさせる雰囲気を作り、研修生自身が自ら悔い改め、他人を告発し、過去の行動の違法性、犯罪性、危険性を深く認識することを促す。  
 心理カウンセリングに焦点を当て、矯正教育が重要な役割を果たすようにもっていく。
 曖昧な理解、不満な態度、または対立する感情を持っている者に対しては、教育管理幹部の「多包一 (複数の幹部が一人を教育する)」等のやり方を実行し、最も厄介な問題である思想転化教育を大がかりに展開し、確実に良好な結果に到達するようにする。

 (12)養成教育(良好な生活習慣を身に付けさせる教育)。養成教育を変革教育の重要な内容にし、日常生活、衛生、礼儀作法、儀礼教育から始める、厳格な生活管理指導制度を作る。
 管理取り締まりと習慣づけを強化し、研修生の健康状態を良好にし、礼儀正しい行為、規則や命令に従う行為、団結・友愛の行為を習慣づける。
 研修生の衛生管理を強化し、適時の散髪、ひげそり、着替えを保証する。週に1〜2回の入浴時間をつくり、良い生活習慣を身に付けさせる。

 (13) 家族教育。手紙、電話、ビデオ、ビデオチャット、面会、共に食事をすることを通して、研修生が家族や親せきと交流し、彼らを感化するための仕組みをつくり、研修生が少なくとも週に1回は電話で話し、月に1回はビデオチャットを行い、家族と研修生に安心感を与えるようにする。
 家族との会話のあとに思想に問題が生じ心情が変化することに注意を払い、もしそれらを発見した場合には、すぐに思想指導を行う。地元の学校と、双方向教育支援と双方向点数制度の確立を検討し、 研修生への思想転化教育を促進する 。
 

3 分類と点数制管理
 (14)分類管理。訓練センターに、極めて厳格な管理ゾーン、厳格な管理ゾーン、一般的な管理ゾーンを設定し、審査の状況に応じて研修生を3つの管理ゾーンに置き、それぞれ異なる教育訓練方法と管理システムを採用する。 実際の行動状況と点数をもとに評定・審査を行い、研修生の教育管理レベルを動的に調整する。研修生が訓練センターに入所し、あるいは出所する場合は、その情報は即座に公安の“一体化プラットフォームに記録する。
 「1人1ファイル」の要求に従い、研修生の教育訓練ファイルを作成し、思想教育、学習訓練、規律の遵守などの面で現れる材料、賞罰やレベルの昇降などの情報を、すばやく正確にその中に収集しなければならない。

 (15)行動管理。研修生の学習、生活、活動の管理システムを詳細に制定する。
  研修生の日常生活行動規則を強化し、起床、点呼、洗顔、用便、部屋の整理、食事、学習、就寝、ドアの閉め方などに関する規則を盛り込む。違反した場合の懲戒、処罰を重くし 、 真剣で標準化された秩序ある学習生活環境を形成する。

 (16)点数管理。各地にテストの評価と点数チェックの管理システムを作り、研修生の思考変化、教育訓練、および規則遵守等の状況に基づき、項目別評価と項目別点数管理を行う。
 毎月1回の評定を継続し、月の評定を集計し年期の合計点数表を作成、これを学籍ファイルに記録する。 研修者の点数が教育訓練の効果を測定する基本情報となり、それらは賞罰、および家族の訪問に直接的な関係を持ち、点数に従ってレベル分類と差別化がなされ 、 管理者への服従、真面目な学習、真の思想転化を研修者に奨励する 。

 修了の評定・審査制度の運用
 (17)修了条件。 研修生の教育訓練点数に基づいた統一的標準値を設定し、研修生の修了決定を厳しく管理強化する。修了は次の条件を満たす必要がある。
 1、 研修開始時に比べて問題点が少なくなっていること。
 2、 少なくとも一年以上の研修を受けていること。  
 3、 一般管理区域に属する研修生であること。  
 4、育・訓練の合計点数と、思想転化・学業成績・規則遵守等の点数がすべて規定基準を満たしていること。  
 、修了によるその他への影響がまったくないこと。  

 (18)評価と承認。各研修センターは、党組織の書記の監督責任の下、研修生評価チームを設置し、修了条件を満たす学生の包括的な状況の予備評価を実施する。
 評価意見書を個々に作成し、“一体化プラットフォーム”によるチェックで新しい問題が発見されなかった場合、県(市、区)職業技能教育訓練服務局に報告される。
 その後、県(市、区)の職業技能教育訓練指導グループによる再評価を受け、最終的に地(州、市)の職業技能教育訓練服務局に最終評価のために報告し、地方委員会の同志の審査と承認に従い、研修生が修了前技能向上クラスに参加できるかどうかが決定される。  

 (19)技能の向上。初期訓練プログラムを修了したすべての研修生は、3か月~6か月間、集中技能訓練のための職業技能向上クラスに送られる。各県は研修生用の環境を整えるために、専用の場所と施設を設置しなければならない。
 訓練は研修生の就業希望と社会的ニーズに基づいて行われ、訓練修了後できるだけ早く雇用が達成できるように、的を絞った技能訓練を実施し、心理適合教育、政策・法規教育を強化し、社会への統合を積極的に導いていかなければならない。

 (20)就業支援サービス。 地県においては、“修了一批就業一批〔修了者の数と同じだけの職業の数がある〕”の要件に従って雇用支援・再定住計画を策定し、研修を修了した者に就職先を用意し、就職希望者がスムーズに就職できるようにあらゆる努力をしなければならない。  
 就業能力がなく生活が困難な者のために、 草の根組織 を活用して、彼らに対する支援活動を真剣に行い、実際的な困難を解決することが必要である。  

 (21)フォローアップ教育支援。 修了生のフォローアップ教育支援を強化するため、 地元の草の根組織 が フォローアップ教育支援を行う責任を持ち、警察署と司法当局もこれに含まれる。 修了生は、1年間は監視ラインから離れてはならず、彼らの行動は把握されていなければならない。  
 一人も漏れなく包括的にカバーするために、教育支援、管理の責任を厳格に果たさなければならない。


 組織指導者と仕事保障の強化
(一部欠落) ……最も重要なことは、長期的に運用するための思想を確立し、地県党委員会が「最高責任者」となる制度を実行することである。
 地県両レベルで職業技能センターの指導チームを形成し、地県で職業技能教育センターチームを作り、地県党委員会書記がチームのリーダーを務め、公安、司法、教育、保健衛生の各部門が参加して、一致団結した力を形成しなければならない。  
 自治区編集の≪主要地(州、市)および県(市、区)における職業・技能教育訓練服務管理機構設立に関する通知≫に従い、地方レベルでの職業技能教育訓練服務管理機構を整え、人員編成、執務場所と執務条件を策定し、業務が効果的に実行され、完全に機能するようにする。

 (23)強力なチームの創設。最強の指導者、最強の幹部、最強の治安部隊を訓練センターに配置し、指導者チームと幹部チームの構築に力を入れ、政治的に強力で、行動力があり献身的で優れた任務遂行力を持つ教育管理の幹部チームづくりに力を入れる。これまでの職員は厳重な検査を受け、新しく選任された職員と共に訓練センターに配置される。  
 責任感が弱く能力の低いチームメンバーや教育管 理幹部・セキュリティ担当者はすぐに調整して配置転換をする 。  
 政治思想の構築を実質的に強化し、幹部の教育 、訓練、管理、監督を強化し、評価点数と待遇の連動システムを確立し、幹部の総合的な質と専門能力を向上させる。 訓練センターの各管理ゾーンには 共産党の指導力、工作力、組織力の影響が全体に及ぶように、個別の党支部を設置する必要がある。

  (24) 保障の強化。 各地において人材・資金の投入を増やし、教育訓練に必要な職員配置、経費の使用、および施設等の設置に対して、全力で保障を与えることが必要である。  
 教育訓練のための経費を年間予算に組み入れ、研修生の食事基準を厳格にし、場所の建設と拡張行程を加速させ、訓練施設のセキュリティ施設と環境条件の継続的な改善を行わなければならない。

 (25) 厳格な機密保持。職業技能教育および訓練センターの業務は政治性が強く非常にデリケートな部分を有している。
 職員の機密保持意識を強化し、政治規律と機密保持規律を厳しく実行しなければならない。
 携帯電話、カメラなど録音録画機器を教育管理区域へ持ち込み、インターネットに写真を自由に載せることは厳しく禁じられる。
 関連する重要なデータを集めたり広めたり、外部に公開したりしてはならない。外部から来る人物……(最終の9ページ目脱落)

( 手書き部分) 各地の政治法务委员会の党書记に迅速に送り、調査手配ができるようにされたし。 朱海侖 16/6 (この部分は中国語原文無し。英訳文より訳出

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


"一体化統合作戦プラットフォーム" 毎日の状況報告

自治区党委員会厳重取締り前線指揮部

 
第2期 2017年6月16日   “還流防止、派遣”の状況について 

 “一体化統合作戦プラットフォーム(以下一体化プラットフォーム)”のスクリーニングにより、中国のビザを申請中の、元新疆籍の外国籍取得者が、現在1535人(そのうちトルコ国籍取得者が344人。詳細は別紙参照)いることが判明した。   
 元籍地はウルムチ979人、ホータン34人、ハミ9人,アルタイ14人,昌吉20人,イリ167人,博州 〔博尔塔拉(ボルタラ)蒙古自治州〕 10人,トルファン23人,アクス50人,カシュガル68人,塔城26人,カラマイ65人,巴州 〔巴音郭楞(バインゴリン)蒙古自治州〕 22人,克州 〔克孜勒蘇柯爾克孜(クズルス・キルギス)自治州〕 47人,石河子1人。   
 上記のうち637人が2016年6月1日以降に入国していることが記録されており(詳細は別紙参照)、そのうち75人が国内にいることの確認がとれている(1人は逃亡中。数人は重要人物と密接な関係にある。詳細は別紙参照)。562人については複数の身分を持つ可能性があり、彼らが国内で活動していることを否定できない。75人の国籍は、トルコ26人、オーストラリア23人、アメリカ3人、スエーデン5人、 ニュージーラ ンド2人、オランダ2人、ウズベキスタン3人、イギリス2人、カナダ5人、フィンランド3人、フランス1人、キルギスタン1人。    

 各地において、国籍を取得し中国のビザをすでに取得した1,535人に対して、特にこの1年のあいだに入国した637人、国内にいることが確認できている75人に対して 、草の根組織と“十戸連防(十戸の世帯を防衛隊(取り締まり隊)の最小ユニットとしたもの)の力を最大限に活用し 、 “一体化プラットフォーム”と組み合わせて分析し、本人確認を一人一人行なわなければならない 。  
 すでに国籍を抹消した者でテロリストとの関連が排除できない者は国外追放とし、国籍を抹消していないが疑惑が排除できない者に対しては、集中的な教育訓練を行って審査しなければならない。  

 “一体化プラットフォーム”のスクリーニングにより、以下のことが明らかになった。 
 中国大使館と領事館で中国の有効ビザをすでに取得している元新疆籍の外国居住者は、4,341人(トルコの607人を含む。詳細は別紙)である。   
 彼らの元籍地はウルムチが1,409人、トルファン65人、巴州67人、カシュガル486人、イリ400人、アルタイ 1 09人、カラマイ62人、ハミ34人、昌吉61人、アクス71人、ホータン337人、博州23人、 克州1,088人、塔城122人、兵団7名 。〔兵団(新疆生産建設兵団)は新疆ウイグル自治区で開墾と辺境防衛を行う準軍事政府組織〕 
 上記のうち中国に入国したが出国していない者は1,707人(トルコで有効ビザを取得した187人を含む。詳細は別紙参照)。 
 彼らの元籍地はウルムチが354人、トルファン23人、巴州31人、カシュガル205人、イリ148人、 アルタイ14人、カラマイ17人、ハミ17人、昌吉11人、アクス15人、ホータン178人、博州9人、克州662人、塔城21人、兵団2人。   

 各地において、中国大使館と領事館で中国の有効ビザをすでに取得している4,341人に対して、特に入国後に出国していない1,707人に対して 、草の根組織の力と“十戸連防の力を最大限に活用し 、“一体化プラットフォーム”と組み合わせて分析し、本人確認を一人一人行なわなければならない。   
 まだ国外にいるがテロとの関りが排除できない者に対しては入国手続き後、国内に入った時点ですぐに逮捕する。入国している者で疑惑が排除できない者に対しては、集中的な教育訓練を行い審査しなければならない。
 将来、外国のパスポートを持つ元新疆籍の者が、海外にある中国大使館または領事館にビザの申請に来た場合、公安機関による審査に加え、地元の党委政法委が主導して、草の根組織、“十戸連防”の力を最大限に活用し 、 “一体化プラットフォーム”と組み合わせて分析し、調査・審査を強化し、 テロとの関りの疑惑が排除できない者に対しては、入国時に逮捕するか、またはビザの発給を拒否する。

第9期 2017年6月21日 “連絡網遮断”の状 

 2015年9月から今年6月19日までに、合計4,122人が同じIDでアカウントを開設し、少なくとも3回閉鎖されたことが判明した。具体的な状況は以下の通り。 
 戸籍地がカシュガル地区の者1324人、ホータン地区1,110人、アクス地区730人、イリ州255人、トルファン192人、克州138人、ウルムチ市135人、兵団103人、巴州74人、ハミ市21人、昌吉州17人、博州10人、カラマイ市10人、塔城地区3人。(詳細は別紙1参照)    
 本年1月1日以降、ネットワークブロッキングの強化、有害ソフトウェアの削除、 識別モデルの活用と取り締まり強化により、国内と海外とのコミュニケーションが効果的に抑制され、一日のコミュニケーション人数は10人未満に減少した。    
 これまでに「9.13」が識別された合計1,552人のアカウントが閉鎖された。アカウント所有者の具体的な状況は以下のとおり。   
 戸籍地がアクス地区の者363人、カシュガル地区345人、ホータン地区290人、ウルムチ143人、イリ地区104人、トルファン地区76人、克州73人、巴州58人、新疆兵団35人、ハミ地区15人、カラマイ15人、博州10人、塔城地区10人、昌吉州9人、アルタイ地区5人、石河子1人。(詳細は別紙2参照)   
 各地において上記の人物たちの身柄を押さえ審査し、テロとの関与が疑われた者については証拠を固め、法律に従って即座に拘禁する。そして通知を受けてから3日以内に、拘禁に関する報告を返信しなければならない。


第14期 2017年6月25日 南新疆4州の“一体化プラットフォーム”による検証状 

 朱海侖同志は6月19日、克州で“一体化プラットフォーム”構築の調査研究時に意見を提出した。「自治区は積極的かつ定量的にデータを地州に送り、プロセス全体の有効性を追跡する必要があり、それを南新疆4州で先行して推進する。」 
 4州の地方政党委員会はこれを重視して誠実に実施した。

 (以下中国語原文黒塗り。英訳文から訳出) 
  6月19日から25日まで、南新疆4州の“一体化プラットフォーム”は24,412人の不審者を各地政府に通知した。内訳はカシュガル16,354人、ホータン3,282人、克州2,596人、アクス2,380人。 
 検証作業のあと706人が犯罪者として拘束された。内訳はホータンで542人、克州85人、アクス79人。15,683人が教育訓練センターに送られた。内訳はカシュガル11,165人、ホータン2475人、克州737人、アクス1,306人。2,096人がテロ防止のための監視下に置かれた。内訳は克州825人、カシュガル1,033人、アクス290人。一時的に拘束できなかった者が5,508人で、内訳はカシュガル4,156人、カシュガル825人、アクス290人、ホータン237人。(詳細は別紙参照)

 (以下中国語原文から訳出) 
 フィードバック検証の結果、6つの問題が浮かび上がった。
 (1)他の場所における長期滞在と、住所の移転や世帯の分離が行われていること。
 (2)偽名で登録されていて身分証明書と一致しない携帯電話がある。
 (3)他人の身分証明書を使用しIDカードの情報が一致しないものがある。
 (4)本人が死亡している、調査する人物がそこにいない、という状況で彼らの証明書が他人によって使用されている。
 (5)公務員、大学生の取り扱いが難しい。
 (6)住所不定で確認できない者が存在している。  
 上述した問題が検証作業を無駄にしてしまうことになり、深刻な憂慮をもたらした。厳しい取り組みと調査そして情報の一般化処理がなければ、実際のリスクを排除することはできない。 

 次の段階における工作要件として;
 (1) これらを重視し困難を克服すること。 “一体化プラットフォーム”によって浮かび上がってきた問題人物や状況は、安定化に影響する大きなリスクとなりうる。 
  追跡調査が困難な人物や状況は危険中の危険、隠れた災禍中の災禍であり、各地州は警戒をさらに高め、自治区党委員会の行う最 前線の攻撃指揮の要求を厳格に実行して取り締まらなければならない。
 特に、困難を克服するために自ら手配の方法を研究し、対処法や措置を研究し、調査フィードバックを監督指導する努力をしなければならない 。

 (2)専門家グループとの強力、詳細な検証 。
  各地においては専門家グループと協力し、公安機関や 、草の根組織訪問工作グループ、“十戸連防”などの組織の力を最大限に活用し 、 “一体化プラットフォーム”によって割り出された工作対象者の家へ入り、訪問し、照会し、必ず徹底的な調査を行わなければならない同時に、調査が不十分で安心できない者の情報を“一体化プラットフォーム”に記録して技術的な管理を行い、定期的に更新しなければならない。 
 それは、人間の五感にタイムリーな警告が与えられることにより、社会的防衛組織が連動して調査、制御、データ収集などに効果を発揮し、危険を防ぐことができるからである。  
 また、戸籍が移動した状況、公務員と大学生の特殊な状況、彼らの目的地の詳細を明確にし、詳細な検証結果をテキストとデータ形式でフィードバックする必要がある。(詳細は別紙2参照) 

 (3)分類処理と措置。 “一体化プラットフォーム”から割り出されたさまざまなタイプの人物データを用い、各地において質的量的な有害度に応じて「刑事拘留、教育訓練、留置審査、予防監視」などのレベルに分類された措置をとる。 
 多くの異なる種類のタグを持っている者、特に不良グループを形成している者で、かつグループの中でも多数がタグを持っている場合、危険度を高くし、措置の程度を引き上げる。
 その地区に問題人物がいるときには、とられた措置のフィードバックをする。その地区にいない場合は、彼らがどこにいるのか、具体的には国外にいるかどうか、新疆の外にいるか中にいるか、そしてそれに対して取られた措置が説明されなければならない。   
 世帯が移動して人がいなくなった場合や、携帯電話が偽名で登録されていて名前と身分証明書が一致しない場合は、原籍地と目的地の両方で検索を実行し、両方が問題を管理しコントロールする必要があり、対策を明確に決定しなければならない。 
 対象者がすでに死亡している場合、調査する人物がそこにいない場合、対象者が身分証明書と符号せず他人の身分証明書を使用して所在が不明な場合は、包括的な施策や追跡調査を開始する。 
 データによって割り出された対象者が公務員で問題が検証された場合、規制に従って調査し、真剣に対処する必要がある。問題がない場合、本人が所属部署に赴き説明し、保証書を作成する。対象者が学生の場合、批判・教育指導を行い、問題がある場合は法律に従って対処しなければならない 。

 (4)犯罪の証拠固めと証拠保全の注意。
 取り締まりのために各地の公安機関はセキュリティデータを保全し迅速に電子物証に変換しなければならない。特に容疑者の行動データと関係データを組み合わせ、鍵になる証拠を形成し、それらを検 察 および裁判所に送信する。同時に、民衆組織が調査・偵察を行う場合は、違法な宣伝資料やテロに関わる音声データ、映像、爆発物の原材料など、犯罪の物証に注意を払わなければならない 。


20期 2017年6月29日 “土壌の発掘、削減、除去”の状

 “ 土壌の発掘、削減、除去 “ に関する自治区党委員会の要求に従って、テロリストがソフトウェア「快牙」を用いて音声やビデオを配信しているという特徴をもとに、自治区の“一体化プラットフォーム”は「快牙」のユーザーのスクリーニングおよび分析をし、2016年7月7日以来、新疆では「快牙」を1,869,310人のウイグル人が使用したことがわかった。 
 その中で“野アフン”がカシュガル、ホータン、アクス、克州で3,925人、彼らの関係者が5,576人、ヒジュラット(ヒジュラ)”が124人で彼らの関係者が72人。出国したまま中国に帰国していない者の関係者は594人である。   

 これらの内、逃亡者298人、拘留者26,602人、野アフン2,783人、身元不明の帰国者38人、違法出国者214人、長期出国者で帰国していない者301人、かつて3回以上拘束されて“連絡網遮断”の対象となった者1,597人、海外で“東トルキスタン運動”などのテロ組織に参加した(以下、中国語原文は黒塗り。英訳文から訳出)者は32人。   
上述した者たちの中で「快牙」を使用し、多くの有害なタグ(詳細は付別紙1を参照)を持っている者は合計40,557人である。  
内訳はカシュガル15,635人、アクス8,008人、ホータン5,740人、イリ3,526人、克州1,865人、(以下中国語原文より訳出)ウルムチ1,449人、巴州1,086人、博州300人、トルファン1,611人、昌434人、ハミ268人、塔城149人、カラマイ95人、アルタイ51人、兵団340人(石河子11名、農一師 (農業第一師団) 36人、農二師4人、農三師150人、農四師38人、農五師13人、農六師2人、農七師1人、農十二師15人、農十三師18人、農十四師52人 )    

 各地において草の根組織、“十戸連防および“一体化プラットフォーム”の力を最大限に利用して、各々の調査・検証をし、テロの疑いがある者については証拠を固め、法律に則ってすばやく取り締まることが必要である。   
テロとの関りの疑惑が排除できない者に対しては、訓練とさらなるスクリーニングに重点をおく。検証の状況は3日以内に報告され、詳細の報告書が添付されなければならない。 さらに、すべての地域では3日以内に“野アフン”、教育訓練を受けた研修者、“東トルキスタン運動”、“IS”等のテロ組織への参加が疑われる者のリストを提出しなければならない 。

                                     野アフンは正式な資格を持っていない在野の宗教指導者(アフン)という意味。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

↑上へ

強制収容所の中にいる人たち

 上の写真は、当局に身柄を拘束され、強制収容所内にいるとされる人たちの写真で、ネット上にあげられているものを集めて作成されたものである。  
 「2016年から現在までに中国で投獄されたウイグルの知識人リスト 」には医療関係者、大学教授、中高学校教師、出版者、編集者、ジャーナリスト、詩人、作家、学者、俳優、監督、歌手、テレビ・ラジオ局の司会者、コンピュータ・エンジニア、写真家、画家、その他の分野の382人の名前が載せられている。  
 各界の指導的立場にある人ばかりで、その発言が影響を持っている人たちであることがわかる。
 また、リストには日本と縁の深い人たちも載せられている。新疆大学のラヒラ・ダウト教授は複数の日本人研究者と共にイスラム聖者廟について研究した人で、彼女と日本人研究者の一人が共同で編集した本が、東京外国語 大学出版会から2016年に出版されている。 ( 『Mazar:Studies on Islamic Sacred Sites in Central Eurasia(イスラム聖者廟:中央ユーラシアにおけるイスラム聖地の研究』 )
 新疆大学の学長だったタシポラト・テイプ氏は東京理科大学に留学して博士号を取得し、地理学、地質学の分野では世界的に有名な人物である。
 新疆師範大学教授で詩人のアブドゥカディル・ジャラリディン氏は、石川県の北陸先端科学技術大学院大学に留学経験がある。  
 アルズグリ・アブドゥレヒムさんは日本の大学に留学して修士号を取得し、実家に帰ったときに拘束され、その後の消息はわかっていない。

 衛星画像を分析して強制収容所を発見した張肖恩氏は、留学先のアメリカで「天安門事件」に関するドキュメンタリー番組を見てはじめて、中国共産党が行なってきたすさまじい弾圧の事実を知った。彼は強制収容所の衛星画像写真を発表したことで中国政府マークされていたが、今年3月に中国版ツイッターで反共産党的な意見を発表すると、数時間後に国内にいる両親が公安に呼び出されたという。張氏も中国への帰国がかなわなくなった一人となった。      
 ニューヨーク・タイムズ紙が2019年11月16日、ネット上で報じた流出機密文書は、中国政府高官によるリークがもとになっている。文書が24本、全体で403ページという膨大なものであった。これをリークしたのは政府のやり方に不満を抱いていた中国共産党の幹部だったといわれている。彼も、おそらく身の危険を感じていただろう。    
 勇気ある彼らの行動のおかげで、新疆で何が起こっているかを客観的に知ることができた。中国は数年かけて実に周到な準備を進め、鉄格子のない巨大な監獄を作り上げていたのである。  
 内部文書を読むと、同化政策を実行している中国共産党のすさまじいまでの執念と、狂気に似たものが感じられる 。

 昨年4月上旬のことである。新型コロナウイルス感染症対策のための緊急宣言が出されたころ、トルファンに住んでいる知り合いのウイグル人女性が、三か月間強制収容所に入れられ、解放されたあと重い病気にかかって寝込んでいる、という知らせを受け取った。私は強いショックを受けた。  
 彼女は新疆の大学で私にウイグル語を教えてくれた先生の妹で、私がトルファン旅行をした当時は高校教師だった。無口でとても穏やかな性格の人で、トルファンに滞在していたあいだはトルファン観光のお供をしてくれた。  
 当時の先生の実家は典型的なトルファンの農家の造りで、風呂場がなかった。滞在しているときはいつも先生のお母さんが私のために「日本人はきれい好きだと聞いている。外から帰ってきてほこりだらけでいるのは嫌だろうから」と言ってお湯をわかして行水ができるように準備してくれた。
 数年後、先生のお母さんが日本に遊びに来られた。そして、「バス・トイレ付きのマンションに引っ越したので、今度はいつでもお風呂に入ることができるからぜひ来てくれ」、とおっしゃって、お互いに笑い合った。 先生の妹さんが捕らえられたのは、トルコに団体で観光旅行に出かけたからだった。帰国したとき全員が空港からそのまま収容所に連れていかれたということである。三か月後に重い病に倒れるような何があったのか。 彼女の一人息子は20歳のときに白血病を発症して亡くなっている。ロプノールでは50回以上核実験が行なわれ、家畜の大量死が起こり、多くの子供たちが白血病にかかっている。彼が亡くなったのもそれが原因ではないかと言われている。

 いま新疆で起きているのはジェノサイドである。ジェノサイドはよく「大量虐殺」と同意語に使われているが、正確にいうと「geno(種族 ギリシャ語)」と「cide(殺戮 ラテン語)」を組み合わせて、1944年に作られた合成語である。 1948年12月9日、国連は「国民的、民族的、人種的、または宗教的な集団の全体もしくは一部を破壊する意図をもって取られる行動」がジェノサイドであると定義し、ジェノサイド犯罪の防止と処罰に関する条約を採択した。
 実際にはどのようなことがジェノサイドにあたるかというと、  
 集団の構成員を殺害すること、  
 集団の構成員に重大な肉体的または精神的な危害を加えること、  
 集団の全部または一部を物理的に破壊するような生活環境を意図的に与えること、  
 集団内での出生を妨げることを意図した措置を講ずること、  
 集団の子供を別の集団に強制的に移送すること、とされている。  

 これらに照らし合わせてみても、いま新疆で起こっていることは、まぎれもなくジェノサイドである。  
 国連では、ジェノサイド条約の締約国は「防止と処罰を行なう義務」を負うことと定められている。中国はジェノサイド条約を批准している国なのに、国連が定めた条約を無視し、「内政干渉をするな」という態度を崩していない。この状態をいつまでも放っておくと、国連の存在意義は失われてしまうだろう。ちなみに、日本はジェノサイド条約を批准していない。
 日本に住んでいる知り合いのウイグル人は、中国当局からスパイ活動を強要され、友人を裏切ることはできないとその要求を断り、新疆にいる家族との連絡を自ら断った。 彼はもう故郷に戻ることもできず両親や兄弟とも会うこともできない。その悲しみ、苦しみ、絶望の深さははかりしれない。  

 ほんの少し想像力を働かせていただきたい。日本がどこかの国に支配され、学校では日本語が教えられなくなる。授業は支配国の言語で行なわれる。これまでに出版された日本語の本が焼却されてしまう。公の場所では日本語を話すことが禁止される。お寺や神社、墓地が破壊され、その跡地に娯楽施設が作られる。
 歌舞伎や能、狂言、文楽、日本舞踊といった伝統文化の担い手である人たちや民謡歌手が、「民族意識を高める活動は国家の分裂に手を貸すことである」という罪で逮捕され投獄される。塾を作って日本語を教えた人たち、資本を蓄えて起業した人たちが、不正な金を集めたといって逮捕され、財産を没収されてしまう。
 もし日本がこのような状況になったとしたら、日本人はいったいどういう行動をとるだろうか。  
 新疆では若い女性への強制的な不妊手術や、処刑された「政治犯」の臓器売買ビジネスなど、これ以上は書くのがつらくなるようなことも実際に起こっている。中国がどれだけ「捏造だ」と反論しようと、すでに複数の調査機関が数字を出して証明している。  
 中国政府のこのようなやり方に我慢できなくなったウイグル人は何度も抵抗を試み、最後には圧倒的な武力の前に力尽きた。そしていま、巨大なハイテク監獄の中で、目には見えない鎖で手足を縛られて生きている。  
 私は、自分が長いあいだ学んできたウイグル文学が中国では消滅の危機にあることを、心から悲しんでいる。だから、とにかく小説や詩を翻訳しつづけてきたし、これからも続けていくだろう。新疆には豊かなウイグルの文化を作り上げた人たちがいることを、一人でも多くの人に知ってほしいからだ。  
 ウイグル語の辞書を引きながら翻訳をしていると、いつも新疆で知り合った人たちの顔が浮かんでくる。大学で机を並べて勉強した若いクラスメートたち、新年のパーティーでいっしょに踊った先生たち。彼らが無事でいますようにと祈ることしか、私にはできない。

東綾子 2021年8月
翻訳家: 訳書 アブドゥレヒム・オトキュル『英雄たちの涙 目覚めよウイグル』(まどか出版)、
        トルグン・アルマス『ウイグル人』(集広舎) 他

↑上へ

トップページ
詩が語るペルハット・トルスンの半生
ペルハット・トルスンとはどういう人か
不条理の哲学とペルハット・トルスン
ペルハット・トルスンの詩の世界

♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠

参考とした主な資料
(日本語)
・ イリハム・トフティ氏の無期懲役が確定、ウイグル問題を改めて考える   <https://wedge.ismedia.jp/articles/-/4476 >
・ カナダの中国人留学生、新疆の収容施設21カ所を発見  <https://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20180713_01220180713 >
・ カミュ(宮崎嶺雄訳)『ペスト』 , 1969,新潮社.
・ 国家分裂容疑で逮捕のウイグル族学者、米政府が中国に「深刻な懸念」 <https://www.reuters.com/article/l3n0lw08n-uighur-professor-arrest-idJPTYEA1Q01620140227 >
・子どもが増えるのは許さない! 中国、少数民族ウイグル族の女性に中絶や避妊などを強制か <https://www.businessinsider.jp/post-215663 >
・ 人民中国インターネット版2009年2月5日   <http://www.peoplechina.com.cn/wenhua/2009-02/05/content_177107.htm >
・ 『聖書(新共同訳)』 , 日本聖書協会,1989 .
・ 世界経済評論IMPACT   <http://www.world-economic-review.jp/impact/article1978.html >
・ 福島香織『ウイグル人に何が起きているのか 』 PHP研究所,2019.
・ ムカイダイス『ウイグルジェノサイド』 , ハート出版,2021.
・ 劉宇生他編(山口昭他訳)『新疆概覧』 , 文芸社,2003 .
・ 「巨大な刑務所の中にいるよう」ウイグル滞在10年のカナダ人夫婦   <https://www.afpbb.com/articles/-/3345438 >
・ ASA17-021-2004東大院生の新疆ウイグル族トフティさん、依然獄中に   <https://w.atwiki.jp/ai-kunitati/pages/24.html >
(中国語)
・ 烏魯木斉木的南城北城——一位維吾爾族作家的穿越生活   <http://www.infzm.com/content/61754 > ・ 夏依甫・沙拉木編(阿卜力孜訳)『燃焼的麦穂―維吾爾青年先鋒詩人詩選』 長江文芸出版 .
・ 『新疆地方史』 新疆大学出版社,1992.
(ウイグル語)
・ Muhabet lirikiliridin 100 parche , <https://elkitab.org/muhebbet_lirikiliridin_yuz_parche-perhat_tursun/muhabet_lirikiliridin_parche/ >
・ Turghun Almas, UYGHURLAR, World Uyghur Congress,2010.
(英語)
・ ‘Absolutely No Mercy’: <https://www.nytimes.com/interactive/2019/11/16/world/asia/china-xinjiang-documents.html >
・ Adoro te devote, <https://en.wikipedia.org/wiki/Adoro_te_devote >
・ Genocide Convention , <https://en.wikipedia.org/wiki/Genocide_Convention >
・ List of Uyghur intellectuals imprisoned in China from 2016 to the present (Last updated by Abduweli Ayup on March 13th, 2021) <https://shahit.biz/supp/list_003.pdf >
・ Meet China’s Salman Rushdie, <https://foreignpolicy.com/2015/10/01/china-xinjiang-islam-salman-rushdie-uighur/ >
・ Read the China Cables Documents-ICIJ, <https://www.icij.org/investigations/china-cables/read-the-china-cables-documents/ >
・ The Backstreets: A Novel from Xinjiang, <https://www.amazon.co.jp/Backstreets-Novel-Xinjiang-Perhat-Tursun/dp/0231202903 >
・ The disappearance of Perhat Tursun, <https://supchina.com/2020/02/05/DISAPPEARANCE-OF-PERHAT-TURSUN-UYGHUR-WORLDS-GREATEST-AUTHOR/ >〉
・ Uyghur Poetry in Translation: Perhat Tursun’s “Elegy” <https://medium.com/fairbank-center/uyghur-poetry-in-translation-perhat-tursuns-elegy-902a58b7a0aa >

詩の原文掲載のウェブサイト・書籍
(ウイグル語 )
Muhabetlirikiliridin parche 出会い騙してもいい<https://elkitab.org/muhebbet_lirikiliridin_yuz_parche-perhat_tursun/muhabet_lirikiliridin_parche/ > Edip Perhat Tursun Sheirliri  燃えている麦母語 , 朝の感覚 , カスィー ダ , フ ランツ・カフカ , ミイラ , 夕暮れ時に眠る者   <https://tengritagh.org/2016/03/17/perhat-tursun-sheirliri/ > 
Tarim deryasi  タリム川   <https://tengritagh.org/2015/06/20/tarim-deryasi/ >
(中国語 )
帕爾哈提・吐爾遜:詩選 (17-20) 無 , 五年   < https://www.chinesepen.org/blog/archives/137723 >
帕爾哈提・吐爾遜:詩選 (1-3) 無限   < https://www.chinesepen.org/blog/archives/137478 >
帕爾哈提・吐爾遜:詩選 (4-8) イラク , 四十六行詩 , 詩人とゴキブリ   < https://www.chinesepen.org/blog/archives/137517 >
帕爾哈提・吐爾遜:詩選 (13-16) 僕のために泣かないで , 裸の海 , ロプノール   < https://www.chinesepen.org/blog/archives/137594 >
『燃焼的麦穂―維吾爾青年先鋒詩人詩選』, 独身男 , ダルヴィーシュ ,長江文芸出版,武漢 ,2016.